揺れる円相場、トランプ関税が映す為替の迷走
2025年3月、為替市場が静かに、しかし確実に揺れています。円相場は一時1ドル=151円に迫る円安・ドル高が進行したものの、方向感が定まらない展開が続いています。その背景にあるのが、再び世界を振り回しているトランプ大統領の関税政策です。
トランプ関税の「二面性」に市場が翻弄
24日、トランプ大統領は輸入自動車への追加関税を「数日中に発表する」と表明し、マーケットに緊張が走りました。一方で、相互関税については猶予措置の可能性にも言及。強硬姿勢と緩和姿勢が交錯することで、市場の見通しはかえって不透明感を増しています。
トランプ関税の難しさは、インフレとデフレという相反する側面を持つ点にあります。みずほ銀行の唐鎌大輔氏が指摘するように、関税強化は短期的には輸入物価を押し上げインフレ要因になる一方で、物価高による消費の減退は中長期的に景気を冷やし、デフレリスクを高めます。この「二面性」が、ドル買いにもドル売りにも動きやすい状況を作り出しているのです。
不確実性の中で身構える市場
日銀の植田総裁、FRBのパウエル議長の両者が会合後に口にしたのは「異常な不確実性」。それを象徴するように、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、2月初旬まで300億ドルを超えていたドル買い持ちは、3月半ばまでに解消され、現在は小幅な売り持ちに転じています。
短期売買に強いヘッジファンドだけでなく、個人投資家も方向感をつかめず、狭い値幅のなかで細かい売買を繰り返す展開。まさに市場全体が「臨戦態勢」を敷いたまま、次の一手を待っている状態です。
動きが鈍る円相場、その先にあるもの
市場の不安を煽ったトランプ関税も、すでに政策カードが出尽くした感があります。かつて1期目の政権時にも、関税政策によるサプライズは次第に薄れ、マーケットの反応が鈍化していきました。今回も同じ道をたどるとすれば、円相場のボラティリティ(変動率)は縮小していく可能性が高いでしょう。
実際、現在の円相場をめぐる投機マネーの動きも限定的になりつつあります。トランプ氏の発言ひとつで揺れ動く時期は、徐々に終わりを迎えているのかもしれません。
脆弱な円高シナリオ
では、これからの円相場はどこへ向かうのでしょうか。多くのアナリストは、いずれ**「脆弱な円高」**へと収れんしていくと見ています。日銀が追加利上げを志向する一方で、FRBは景気減速を受けて再び利下げに舵を切る可能性があり、日米金利差の縮小が進むことが背景です。
とはいえ、日銀も積極的に利上げを進められるわけではなく、かといってドルが急落する要素も少ない。結果、円高といっても極めて緩やかで、力強さに欠ける展開になる公算が高いのです。
為替は難しい——だからこそチャンスも
為替相場は予測が難しいと言われますが、それは裏を返せば、思わぬチャンスも潜んでいるということ。トランプ政権の政策リスクを受け止めながら、次の展開を冷静に見極める視点が、これからの市場を読み解くカギになりそうです。
さまよう円相場 トランプ関税の二面性読み切れず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL2402Z0U5A320C2000000/
日経新聞 2025/3/25

