トランプ関税が映すアメリカの今と、投資のチャンス
2025年、世界の金融市場に波紋を広げているのが、トランプ政権による立て続けの関税発動です。輸入自動車への25%の追加関税、鉄鋼・アルミニウムへの関税強化、カナダやメキシコへの高関税。かつてない規模とスピードで関税の壁を築こうとするトランプ政権、その背後には単なる保護主義を超えた、いくつもの狙いが隠されています。
四兎を追うトランプ政権の戦略
トランプ関税の目的は、大きく4つに分けられます。
1つ目は、財源確保。トランプ政権は、10年間で4.5兆ドル(約680兆円)規模の大型減税を目指しており、関税による歳入増でその財源を賄おうとしています。輸入品に一律10%の関税を課せば、10年間で1.8兆ドルの増収が可能とされており、減税の資金繰りとして関税が位置付けられているのです。
2つ目は、米国産業の復権。中国の軍事拡大を警戒するトランプ政権にとって、自国の製造業の衰退は見過ごせない問題。特に造艦力の低下は安全保障上の大きな懸念であり、製造業保護によるモノづくり基盤の回復を目指しています。
3つ目は、貿易不均衡の是正。中西部の労働者層を支持基盤とするトランプ氏にとって、製造業の雇用を守ることは政策の柱。中国との競争で失われた雇用を取り戻すために、貿易赤字の縮小を強く意識しています。
4つ目は、麻薬対策。フェンタニルなど合成麻薬の流入を抑制するため、中国やメキシコに圧力をかけるツールとして関税を使っているのです。
深謀か、それとも無謀か
こうした四兎を追うトランプ関税ですが、理論的には矛盾やリスクも抱えています。
まず、一律関税はインフレ率を1ポイントほど押し上げるリスクがあり、FRBの利下げ路線を混乱させる可能性があります。次に、米国製造業の再興には10年以上の時間が必要で、短期的な効果は見込みにくい。さらに、貿易赤字の背景には旺盛な消費意欲があり、関税引き上げはかえって消費を冷やし、内需を傷つける可能性も。
加えて、報復関税のリスクも無視できません。欧州や中国が対抗措置を取れば、第二次大戦後築かれた自由貿易体制が崩壊し、世界経済全体が縮小均衡に向かうリスクもはらんでいます。
アメリカの復活は来るのか
トランプ政権の動きは、確かに覇権国アメリカの「終わりの始まり」を示しているかもしれません。しかし、見方を変えれば、アメリカが本来持っている力は失われていないとも言えます。
自由で法の支配が根付いた国。歴史を振り返れば、移民の流入と多様性の力でアメリカは何度も経済を復活させてきました。もしトランプ大統領の時代が過ぎ、再び移民を受け入れ、開かれた社会へと戻っていくなら、アメリカ経済は再び立ち上がる可能性が高いといえるでしょう。
今はアメリカ株を買うチャンスかもしれません。もちろん、もう少し値を下げてくれればさらに嬉しいところですが、長期的な視点で見れば、下がったところは拾う好機と捉えることもできそうです。
時代のうねりを乗り越えるために
世界は変わり続けています。トランプ関税がもたらす短期的な混乱に振り回されるのではなく、もっと長いスパンで物事を見つめること。10年後、20年後の世界を想像しながら、いま一歩踏み出す準備をしておく——それが、これからの投資家に求められる姿勢なのかもしれません。
トランプ関税、四兎を追う 産業復権へ深謀か無謀か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB250I80V20C25A3000000/
日経新聞 2025/3/30
