マネサバおじさん      

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マネー・サバイバル

—知識を武器に、未来を変える—

2025年3月29日

なぜ円安は止まらないのか——日銀の苦闘と日本経済の現在地


2025年、日銀がマイナス金利を解除してから1年が経過しました。この間、日米金利差は確かに縮まりました。それでも、円相場は1ドル=149円台。ちょうど1年前とほぼ同じ水準に戻ってきたのです。

これだけ金利差が縮まったのに円高が進まない——その背景には、日本経済が抱える構造的な問題が色濃く影を落としています。


金利差だけでは動かない円相場

理論的には、金利差が縮まれば円高に向かうはず。実際、日銀はこの1年で追加利上げを2度実施し、政策金利は0.5%に。一方、米連邦準備理事会(FRB)は利下げに動き、米国の金利は4.25〜4.5%へ低下しました。日米金利差は1.5%ほど縮小しています。

それでも円安が続く理由は、単純な金利差の話では説明できません。そこにあるのは、国内マネーの海外流出です。新NISAの追い風もあり、日本の個人投資家の資金が米国株や全世界株に流れています。2024年の対外証券投資額は、前年比2.5倍の11兆5000億円に拡大。この資金流出が円の上昇圧力を打ち消してしまっているのです。


投機筋は円高狙い、それでも進まない現実

面白いのは、ヘッジファンドなど投機筋は円高ポジションを大きく積み上げていること。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、円買い越しは過去最高水準に達しています。

それにもかかわらず円高が進まないのは、国内の強烈なドル需要がそれを相殺しているから。海外勢と国内勢が綱引きをしているような状態です。

この綱引きが続く限り、円相場の方向感は見えにくく、さらに投機筋が円買いポジションを巻き戻した場合、急速な円安に振れるリスクもはらんでいます。


インフレの日本、それでも賃金は上がらない

さらに気になるのは、インフレ率の上昇。日本の消費者物価指数(CPI)は3%上昇、生鮮食品を含めると3.7%。これは、米国(2.8%)やドイツ(2.3%)を上回る水準です。

しかし、肝心の実質賃金は伸びていない。名目賃金は2.8%増えたものの、物価上昇に追いつかず、消費者の財布のひもは緩みません。これが個人消費の低迷につながり、企業も内需に対する期待が持てず、設備投資は海外中心。結果、日本経済は成長の原動力を欠いたままです。


問われるのは「成長力」

BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は、企業が生産性向上に取り組まず、賃金にも反映させない構造を指摘。**「企業が国内市場に魅力を感じず、海外ばかりに目を向ける悪循環が続いている」**と警鐘を鳴らします。

日銀の内田副総裁も「高い成長を求めるなら、生産性向上など、実力そのものを高める方策が必要だ」と述べています。要するに、金融政策だけでなく、構造改革によって経済の地力を高めることが、円安を食い止めるカギなのです。


今、私たちにできることは?

日本の経済・金融政策がすぐに劇的に変わることは期待できないかもしれません。だからこそ、個人レベルでの備えがますます重要になってきます。為替が揺れ動く局面では、資産の一部を外貨建てで持つことや、インフレ耐性のある資産に投資することも選択肢のひとつです。

そして、何よりも大切なのは、冷静に現状を見極める目を持つこと。日本の課題を直視しつつ、自分の資産を守り、育てるために何ができるかを考えるタイミングが、いま来ているのかもしれません。


日銀、なお脱せぬ円安構造 1年で戻った「149円」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB10AUJ0Q5A310C2000000/
日経新聞 2025/3/29