
キヤノンがLED複合機を投入 ― 技術革新が市場を揺さぶる
2025年9月、キヤノンがオフィス向け複合機の旗艦モデルをLED方式で投入します。印刷方式の転換は実に55年ぶり。1970年に国産初の複写機を実用化して以来、レーザー方式を貫いてきたキヤノンが方向転換したという事実は、業界に大きなインパクトを与えます。
複合機市場はペーパーレス化の流れで縮小しており、2018年の出荷台数をピークに26%も減少しています。縮小する市場で勝ち残るには、単なるコスト競争ではなく、構造を大きく変える技術革新が必要でした。キヤノンのLED方式は、その切り札となる可能性を秘めています。
マネサバくん:おじさん、LEDって家庭の照明に使うあのLED?どうして複合機に使えるの?
私:その通り、原理は同じだよ。レーザーは鏡を高速で動かして光を反射させてたけど、LEDは無数の小さな発光素子を直接ドラムに当てて像を作る。構造がシンプルになる分、部品も少なく、故障リスクも下がるんだね。
マネサバくん:なるほど!LEDは電気代も安いし、複合機も省エネになるってことだね。
技術的な革新の中身
従来機との大きな違いは部品点数とサイズ。LEDはドラムとの距離が近く、部品の容積は従来比で95%減少しました。そのスペースを使って新型冷却システムを搭載。大量印刷でも発熱を抑え、画像品質を安定させます。
解像度も従来比8倍。レーザー方式の限界を超え、より滑らかな画像や鮮明な文字が印刷できるようになりました。しかも同じ機種で印刷速度をソフトウェアで変更できるため、生産や在庫管理の効率化も実現します。
こうした仕組みは、カメラや半導体露光装置で培ったキヤノンの光学技術の延長線上にあります。単なるオフィス機器の改良ではなく、同社が持つ総合技術力を統合した成果とも言えるでしょう。
競争環境の変化
LED技術はすでに富士フイルムHDが先行し、リコー・東芝テック・OKIの連合も力を入れています。複合機市場は日本企業が過半を握り、まさに「お家芸」とも言える分野。各社が連合を組んでスケールメリットを追求するなか、キヤノンは独自路線を取っています。
世界シェア首位の約19%を握るキヤノンがLEDに踏み出したことで、競争の軸が一気にLEDへシフトするのは確実な様です。
マネサバくん:おじさん、他の会社は連合を組んでるのに、キヤノンは単独って大丈夫なの?
私:キヤノンは利益率で他社を大きく上回ってる。印刷関連の営業利益率は11%以上で、富士フイルムの6%やリコーの3%より高い。資金力と技術力で単独路線を貫ける余地があるんだって。
マネサバくん:ふむふむ。王者の自信ってやつだね。
投資家目線での評価
投資家として注目すべきは、縮小市場においてもキヤノンが高収益を維持している点です。売上高の6割弱を占める印刷関連事業で2桁の利益率を確保できるのは、技術革新による差別化の結果です。
ペーパーレス化が進んでも、印刷の需要がゼロになることはありません。法務や教育、医療など紙媒体が不可欠な分野は残ります。その残された市場を取り合う段階で、品質・コスト・効率性を兼ね備えた製品を出せる企業だけが生き残れる。今回のLED方式は、その勝負の分岐点になるでしょう。
同時に、この動きは「縮小市場での技術革新」の好例です。成長市場だけが投資の対象になるわけではなく、衰退市場でも新技術で寡占化が進めば高収益モデルが成立する。その視点は投資家として見逃せません。
ペーパーレス化との共存
記事の最後で触れられていたように、複合機の市場は縮小が避けられません。デジタル化の波は止められないからです。だからこそ、各社が生き残りをかけて新技術に集中している。
LED化は単なる印刷方式の変更にとどまらず、省エネ・省スペース・高画質という三拍子を揃えたアプローチです。環境規制やサイバー攻撃対策といった周辺分野に投資余力を残す意味でも、効率化の効果は大きい。
マネサバくん:おじさん、でも紙を使う量は減る一方だよね。投資先として本当に魅力あるの?
私:確かに市場全体は縮小してる。でも縮小市場だからこそ、生き残った勝者は高い収益を確保できるんだ。競合が淘汰されれば、残った企業が市場を独占的に支配できる。だから、技術で差別化できる企業は投資妙味があるんだよ。
マネサバくん:なるほど…。投資の面白さって、成長だけじゃなくて“生き残り戦略”にもあるんだね。
まとめ
キヤノンのLED複合機投入は、単なる製品発表にとどまりません。縮小する市場において、技術革新によって収益構造を守ろうとする試みであり、業界全体の競争環境を変える可能性を秘めています。
「紙離れ」が進む時代にあえて印刷技術を磨く。その姿勢は一見逆行のように映りますが、逆風の中でも勝ち残るためには不可欠な戦略です。投資家としても、こうした「逆張りの技術革新」に注目することが、長期的な成果をつかむ鍵になるでしょう。
【出典】
・タイトル:キヤノン、満を持してLED複合機投入 印刷方式55年ぶり転換
・URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC014FW0R00C25A8000000/
・媒体名:日経新聞
・掲載日:2025年8月26日
