マネサバおじさん      

マネサバおじさん

マネー・サバイバル

—知識を武器に、未来を変える—

2025年7月30日

利上げできない日銀 数字の裏にある静かな葛藤


私: マネサバくん、また日銀が政策金利を据え置くらしいよ。しかも今回は物価見通しを引き上げそうなのに、利上げは見送りになりそう。

マネサバくん: えー!?それって経済の教科書的には逆だよね?物価が上がるなら、金利も上げて抑えるんじゃないの?

私: うん、まさにそのとおり。普通なら“インフレ抑制のための利上げ”がセオリー。でも今回は“何もしない”を選ぶと見られているんだ。利上げできない日銀について、今日は考えて見ましょう。


2025年7月30日からの日銀金融政策決定会合では、2025年度の物価見通しを2.2%から上方に引き上げる見込みながら、政策金利は据え置きとする方針が予想されています。

本来、物価見通しが上がる=インフレリスクが高まるという認識のもと、金融政策は引き締め方向へ進むのが筋。ところが、今回も利上げは見送りの見通し。

これに対して、「政策の整合性はどこにあるのか?」という疑問が湧いてきます。


マネサバくん: でもなんで?利上げすると何か困ることがあるの?

私: うん、それが“日銀の財布”の問題なんだよ。実は、今以上に金利を上げると、日銀自身が債務超過になる可能性があるって言われてるんだ。

マネサバくん: 債務超過って…中央銀行も“赤字”になるの!?

私: そう。中央銀行は無限にお金を刷れるから大丈夫、って思われがちだけど、実際はそう簡単じゃない。


日銀は過去10年以上にわたって大量の国債を購入し続けてきました。その多くは超低金利のもとで買い入れたものであり、現在のように金利が上がると、保有資産の価値が下がり、評価損が膨らむ構造です。

つまり、日銀としては“もうこれ以上金利は上げられない”という金融的ジレンマに直面している可能性があります。

しかも、円安が進んでも、金利政策で対応できない。となると残る手段は“為替介入”くらいですが、それも限界があります。


私: だから今回の見送りは、経済理論的な判断というより、「動きたくても動けない」っていう苦しい選択なのかもしれないね。

マネサバくん: うーん…通貨って“国の信頼”が命なのに、大丈夫なのかなぁ?円、ちょっと心配になってきた…。

私: 投資家としては、こういう“見えにくいリスク”にちゃんと気づくことが大事なんだよね。


今回の日銀の動きは、「政策維持」という一見何も変わっていないような印象を与えますが、裏を返せば「何もできない」ことの表れでもあります。

確かに、景気の腰折れを警戒しての慎重姿勢という説明はできます。しかし、物価上昇が進んでいるにもかかわらず、利上げに踏み切れないという構図は、将来的に“円”という通貨の価値そのものに影響を与えかねません。

すでに為替市場では円安が定着しており、FRBが次回利下げを示唆している中でも、日米金利差の構造は当面続きそうです。


【まとめ】

・日銀は物価見通しを引き上げながらも、政策金利は据え置き
・インフレ局面でも利上げできない背景には、日銀の財務リスクがある可能性
・円安が進んでも“金利で対応できない”という危うい状態
・「動かない政策」の裏には、「動けない現実」がある

投資家として大切なのは、政策の“内容”だけでなく、“なぜそうなったのか”を読み解くこと。特に中央銀行の姿勢は、通貨の信頼性や資産価値に直結するからです。

長期的には、国の財政健全性や中央銀行の独立性が問われる局面が来るかもしれません。今はその「入り口」に立っている――そんな気がしてなりません。


【出典】

・タイトル:日銀は金融政策維持、25年度物価見通し引き上げへ-きょうから会合
・URL:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-29/T034FZGPWCH700?srnd=cojp-v2
・媒体名:ブルームバーグ
・掲載日:2025年7月30日