
“安心”という言葉に潜む罠?個人向け国債ブームの裏側を冷静に見る
私: マネサバくん、最近個人向け国債が人気なんだって。変動10年物で利率がついに1%超えたらしいよ。
マネサバくん: えっ、1%って…それってすごいことなの?ペンギン基準だと、お魚が10匹→11匹になるぐらいのイメージだけど…。
私: うーん…そう言われると微妙な増え方だけど(笑)、メガバンクの10年定期が0.5%くらいだから、預金と比べたら“お得感”があるってことで売れてるらしい。
2025年7月、日本の個人向け国債が静かなブームを迎えています。変動10年物の利率が1%を突破したのは実に17年ぶり。これに呼応するように、7月の発行額は前年同月比3割増の5900億円に達しました。
銀行預金と比べて利率が高いこと、そして“元本保証”という安心感が、中高年層を中心に支持されているようです。
でも――。
投資家の目線で見ると、この「ブーム」には少し違和感を覚えます。
私: でもねマネサバくん、東京都区部の消費者物価指数って、今2.9%なんだよ。
マネサバくん: えっ、それって…利率より物価の上昇が早いってこと?つまり、実質的には“マイナス”ってこと?
私: 正解。1%の金利をもらっても、3%物価が上がれば、資産価値はむしろ目減りしてるってことになる。
国債の利率が1%になったといっても、インフレ率がそれ以上であれば“実質利回り”はマイナス。つまり「増えたように見えて、実は減ってる」状態なのです。
しかも、日銀が国債の買い入れを減らし、機関投資家の需要も減少している今、政府は“個人マネー”を頼りに国債消化を進めているという構図。記事では「家計が保有する国債が10年ぶりの高水準」とも報じられていました。
これを「国民が資産運用に目覚めた」と見るか、「政府が最後の買い手として個人をあてにしている」と見るかは、投資家の視点で大きく変わります。
マネサバくん: でもさ、国債って国が出してるんでしょ?安全なんじゃないの?
私: それが一番の“安心ワード”なんだよね。でも日本ってGDPの2倍以上の借金を抱えてるし、財政的には破綻寸前って見方もある。
マネサバくん: えっ、じゃあ国債って、実は“お得な定期預金”じゃなくて、“見えにくいリスク商品”なのかも?
確かに個人向け国債は元本保証がありますが、それはあくまで「政府が元本を返せる前提」があってこそ。
現在のように日銀の買い支えが減少し、政府の債務が膨張し続けている状況で、国債の利払いコストは増加の一途。つまり、政府が発行を減らすことは難しく、いずれ金利上昇かインフレか、あるいは通貨安という“出口のない選択”に直面する可能性も否定できません。
個人投資家にとって「安全」とされる国債が、実は“リスクを後ろ倒しにしているだけ”であるなら、今の「売れている=良い」という見方には少し立ち止まる必要があるのではないでしょうか。
【まとめ】
・個人向け国債は利率1%を超え人気上昇中
・だがインフレ率は2.9%で、実質利回りはマイナス
・政府の債務増加や日銀の買い入れ減から、個人マネー頼りの構図に
・安全商品とされる国債も、財政リスクを考えれば“疑ってかかる”目が必要
「守りの商品」のはずが、実は「見えない火薬庫」かもしれない――。
投資家として大切なのは、目先の利率ではなく、もっと根本的な「国家の信用」や「通貨の安定性」を見極める目線。
金融資産の分散が大切なのは、この“見えないリスク”がどこに潜んでいるか分からないからです。
【出典】
・タイトル:利率1%超、個人向け国債に集まる投資マネー 国債消化を下支え
・URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB225GE0S5A720C2000000/
・媒体名:日経新聞
・掲載日:2025年7月30日
