「見えない売り」が日本株を動かす?──ETF流出と金利上昇の静かな関係
2025年5月、日本株ETFから1兆3000億円超の資金が流出しました。これは2007年以来の規模で、業界関係者からは「今年も来たか、セル・イン・メイ(5月に売れ)」といった声も。
とはいえ、今年の売りは、個人投資家の「ちょっと利益確定しとこうかな」なんてものではありません。むしろ、主役は地銀や保険会社といった機関投資家たち。彼らが一斉にETFを手放し始めた背景には、「金利上昇」という静かなプレッシャーが隠れています。
日本株は上がった。それでも売られる理由
今年の5月、日経平均は一時3万8000円台まで回復し、株価としては決して悪い地合いではありませんでした。それにもかかわらず、日本株ETFからこれだけの資金が抜けたというのは、やはり“通常ではない売り”が起きていた証拠です。
とくに注目されているのが、地方銀行や保険会社の動き。サブプライム問題以来の大きな流出額を見れば、これは「株が割高」とか「景気後退懸念」だけでは説明がつきません。
債券の含み損を、日本株で“補填”する時代
日銀の超低金利政策が長く続いたことで、多くの金融機関は過去に低利回りの債券を大量に購入していました。しかし、最近の金利上昇によってこれらの債券は価格が下がり、含み損が2.8兆円規模に達しているというのが現状。
その損失を“補填”するために、含み益のある日本株ETFを売って帳尻を合わせるというのが、今起きている構図です。
要は、金利が上がると債券が下がり、その穴埋めに株が売られる。ここに、日本の金融機関が抱える構造的なリスクが顔を出しています。
実は、日銀も“株で救われている”状態
この記事を読んで思い出すのは、日銀のバランスシート。今や中央銀行が保有するETFの含み益が、債券の評価損を相殺し、事実上の債務超過を避けているという、なんとも不思議な状態にあります。
つまり、金融機関にとっても日銀にとっても、日本株が「含み益をもたらす安全資産」になっているのです。これ、考えてみれば本来とは逆の世界。中央銀行が株の値上がりで支えられているというのは、やはり異常事態といえるかもしれません。
“春のETF売り”は今後の恒例行事に?
記事では、「この動きが今後も恒例化する可能性がある」との指摘もありました。金融機関が決算期に向けて損益を調整するため、日本株ETFの売却が春の風物詩になるかもしれないというわけです。
市場にとっては、突然の売り圧力として作用するため、ETF市場の動きはこれからより注目すべき材料になるかもしれません。
投資家としての視点:金利と株、そしてETF
ここで私たち投資家が考えるべきは、「金利が上がれば株が下がる」という金融の基本が、いまリアルに効いてきているという点です。
とくに日本では、これまで金利が“ずっと低いまま”だったために、「金利上昇で損失が出る」構造を見落としがちでした。でも今は違います。金利は動いています。そして、金融機関の資産運用にも直接の影響を与え始めています。
まとめ:数字の裏側にある“流れ”を読む
ETFの資金流出額だけを見て「日本株は弱気か」と判断するのは早計かもしれません。その背後には、金融機関の“ポートフォリオ調整”という必要に迫られた動きがあるからです。
ただし、その構造が変わらない限り、金利が上がれば株が売られるという流れは今後も続く可能性があります。
投資家としては、単なる値動き以上に、こうした“資金の流れ”を意識することが、これからの時代の読み解き方になってくるはずです。
日本株ETFに「セル・イン・メイ」 債券損失の穴埋めで巨額流出
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB02A6Y0S5A600C2000000/
日経新聞 2025/6/4
