マネサバおじさん      

マネサバおじさん

マネー・サバイバル

—知識を武器に、未来を変える—

2025年10月9日
マネサバくんびっくり

AIバフェットの限界を考える

AIがバフェットを再現する時代?

日経新聞の報道によると、アメリカの金融界では「AIがウォーレン・バフェットを再現できる日が5年以内に来る」と言われています。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のアンドリュー・ロー教授は、「AIが人間の直感に似た判断を獲得すれば、投資の神の手を再現できる」と述べています。

すでにヘッジファンドではAIが1日数千銘柄を取引し、アップル株の売買判断も自動で行うようになっています。
AIはニュースや財務情報、購買データまで取り込み、わずか60秒で分析を終える。
もはや人間の手では追いつかない世界です。

でも、本当にAIが“バフェットの再来”になれるのか?
私は、少し懐疑的に見ています。


マネサバくん:おじさん、「AIバフェット」ってすごそうだね! バフェットの知識を全部学習すれば、もう完璧なんじゃない?

:たしかにデータだけ見ればそう思うよね。でも、バフェットの投資って、数字じゃ説明できない“人間の感覚”が大きいんだ。

マネサバくん:感覚? たとえばどんな?

:1983年、彼が家具店の「ネブラスカ・ファニチャー・マート」を買収した時の話が有名だね。契約書も交わさずに握手だけで買収を決めたんだよ。

マネサバくん:えっ! そんなことで!?

:そう。彼は経営者のローズ・ブルームキンさんの誠実さと努力を見て、「この人なら信頼できる」と判断した。AIには、こういう“人を見る目”はまだ無理だと思う。


AI投資のすごさと危うさ

AI投資の進化は本当に目覚ましいものがあります。
カリフォルニア州のヘッジファンド「ボレオン・グループ」は、5000銘柄を人間の手を介さずに取引しているそうです。
株だけでなく、債券や通貨までAIが自動で売買し、年間2桁のリターンを出しています。

しかし、彼らの投資判断の2割は「人間が理由を理解できない」ブラックボックス状態
つまり、AI自身もなぜその判断を下したのかを説明できないのです。

これはとても怖い話です。
金融市場は「なぜ買うか」「なぜ売るか」を理解してこそ、リスクを制御できます。
AIのロジックが読めないということは、暴走したときに誰も止められないということです。


マネサバくん:でも、おじさん。AIって感情がないからこそ、冷静に投資できるんじゃないの?

:おっ、良いところに気が付いたね~。それは確かに強みだね。恐怖や欲に振り回されない。でも、投資って数字だけじゃなくて「社会や人間をどう見るか」も大事なんだ。

マネサバくん:うーん…AIには“想像力”がないってこと?

:そう。AIは“過去に正解があったこと”しか学べない。未来のイノベーションや人の情熱は、まだデータ化できないんだよ。だからAIは「予測」はできても、「発見」はできないんだ。


AIは“合理的”だけど“創造的”ではない

AIの投資判断は確率論に基づいています。
つまり、**「過去のデータから最も確からしい未来を導く」**ことに特化している。
たとえば、アップル株がどの条件で上がりやすいかを計算するのは得意です。

でも、バフェットのように**「これから伸びる企業をまだ誰も知らない段階で見つける」**ことはできません。
それは「データにまだ現れていない可能性」を見る力であり、AIの得意分野ではないのです。

もしAIが人間の直感を模倣しようとするなら、それは膨大なデータに基づいた“統計的な直感”でしかありません。
そこに「人を信じる」「社会を良くしたい」という感情は存在しません。


マネサバくん:じゃあ、おじさん。AIは投資の世界を壊しちゃうの?

:壊すというより、“変える”だね。AIが短期の取引を支配していくのは確実。でも、長期的な価値を見極める投資は、まだ人間の役割が大きい。

マネサバくん:AIが暴走したらどうなるの?

:それが一番怖いところ。MITのロー教授も警告してる。AIが同じような戦略を取れば、みんな同じ方向に動いて市場が壊れる。フラッシュクラッシュの再来だね。

マネサバくん:つまり…AIに任せっきりは危険ってことか。

:その通り。AIが投資を“自動化”する時代ほど、人間が“考える力”を持たなきゃいけないんだよ。


バフェットの投資は「人間の哲学」

バフェットは数字を見て投資をしているようで、実際には**「人間の信頼」と「時間の価値」**を見ていると私は考えています。
彼が投資するのは「誠実な経営者が、長期的に価値を積み上げる会社」。

だからこそ、AIが模倣するのはとても難しい。
AIには「誠実さ」も「忍耐」も「信頼」もありません。
これらは人間社会の中で培われる感情的知性であり、アルゴリズムでは表現しきれないのです。
もしかしたら、今後表現出来る様になるのかもしれませんが。

AIがバフェットを再現したように見えても、それは「バフェットの形をしたプログラム」にすぎません。
やはり「バフェットは再現出来ない」と信じたいところです。


AI投資が教えてくれる“人間の価値”

AIが市場を席巻する時代に、私たち投資家が学ぶべきことは、
「AIと競うこと」ではなく、「AIにできないことを磨くこと」です。

これらはどんなAIにも今のところ代替できません。
むしろ、AIの進化が早まるほど、こうした“非合理な人間らしさ”が価値を持つ時代になると私は考えています。


まとめ:AIバフェットに学ぶ、人間の役割

AIは確かにすごい。
でも、AIが完全な「バフェット」になれる日は来ないでしょう。

彼の投資は「心」と「信頼」に基づいています。
AIはデータを学習できても、信頼を感じることはできない

マネサバくん:おじさん、なんだか“AIバフェット”より“人間バフェット”の方が好きかも。

:はは、そりゃそうだ。投資って、結局は“人と未来を信じる行為”だからね。
AIがどれだけ賢くなっても、その部分だけは、人間の専売特許だよ。


【出典】
・タイトル:バフェット氏の「神の手」、AIで5年以内に再現 ヘッジファンド競う
・URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN312FB0R30C25A8000000/
・媒体名:日本経済新聞
・掲載日:2025年10月9日