
金はどこまで行く?ゴールドマンの「5000ドル」予想を考える
最近のニュースで、投資家の心をくすぐるものがありました。ゴールドマンサックスが「金(ゴールド)は5000ドル近くに上昇する可能性がある」と発表したのです。
すでに年初来で30%以上上がり、ニューヨーク市場では過去最高値を更新。まさに「金ラッシュ」状態と言ってもいいでしょう。
でも、単純に「わー、金だ!買おう!」と飛びつくのは危険。ニュースを読む時は「裏にある意図は何か?」を考えるのも投資家の習慣です。今日はそのあたりをマネサバくんと一緒に整理してみましょう。
マネサバくん:おじさん、金が5000ドルになるかもしれないってニュース見たよ!すごいことじゃない?
私:すごい予想だよね。でも「なぜそうなるのか」を考えないと、単なる見出しに踊らされるだけになっちゃう。
マネサバくん:えー、でも金って安全資産だから、持ってれば安心じゃないの?
私:安全資産って言われるのは「制度的な信認に依存しない」からなんだ。ドルや円は国や中央銀行の信頼で成り立ってるけど、金はその枠組みを超えて価値を保ちやすい。だから「FRBの独立性が損なわれる=政治が中央銀行に口出しする」となると、金の価値に注目が集まるんだよ。
金価格とFRBの関係
ゴールドマンの予想をまとめるとこうです。
- 基本シナリオ:2026年半ばまでに4000ドル
- テールリスクシナリオ:4500ドル
- 米国債から資金が金に1%でも移れば:5000ドル
「FRBの独立性が政治に侵食される」ことが前提条件にあります。特にトランプ大統領が再びFRB理事を解任する動きを見せるなど、政治が金融政策を揺さぶっているのは現実のリスクです。
中央銀行の独立性が失われれば、インフレが制御不能になり、ドルの信頼が下がります。そうなると「ドルより金」という流れが強まるわけです。
マネサバくん:なるほど…。でもおじさん、なんでそんなに「独立性」って大事なの?政治家が景気よくしてくれるなら良さそうに思えるけど。
私:それがね、政治家ってどうしても短期的な人気取りを優先するんだ。選挙を勝つために景気刺激をやりすぎたりする。でも中央銀行は「物価の安定」というもっと長期的な視点で動かないといけない。ここが崩れるとインフレが暴走する可能性が高いんだ。
マネサバくん:うーん…つまり、政治がやりすぎると、ドルが弱くなって、金が強くなるってことか。
私:その通り。だから今回の予想は、単なる値段の話じゃなくて「アメリカの制度に対する信頼が揺らぐ可能性」まで含んでるんだよ。
金投資の難しさ
さて、ここで一つ冷静に考えたいのは「金は必ずしも万能ではない」ということです。
たとえば株式は企業の成長を享受できる資産ですが、金はあくまで「価値の保存」に近い。配当もつかないし、キャッシュフローも生みません。つまり、「守りの資産」である一方、持ちすぎるとリターンが伸びにくいのです。
また、金は歴史的に「インフレ局面」「地政学リスク」「通貨不安」のときに強くなる傾向がありますが、それ以外の時期には長く停滞することもある。2000年代前半に金を買っていた人たちは、長く辛抱する時間を過ごしました。
だから、今のような「みんなが金だ!」と盛り上がる時こそ、冷静に比率を考えることが重要です。
マネサバくん:おじさん、じゃあ実際に投資するならどのくらい金を持てばいいの?全部金に変えちゃえば安心なんじゃ?
私:それはやりすぎ(笑)。分散投資の観点からすると、資産の5~10%くらいを金で持つのが一つの目安だと思う。全力で金に振ると、逆に株式や債券が上がったときに取り残されるからね。
マネサバくん:なるほど…。つまり金は「お守り」みたいな存在なんだね。
私:いい例えだね。お守りを100個持ち歩く人はいないだろう?でも一つは持っておくと安心できる。それと同じ感覚だよ。
今回の予想の裏にあるもの
今回のゴールドマンの予想を単純に「投資助言」として受け取るより、むしろ「アメリカの制度への警告」として読む方が大切だと思います。
・中央銀行の独立性が政治に侵されるリスク
・ドルが準備通貨としての地位を揺るがすリスク
・インフレが加速するリスク
これらが重なると、投資家は「資産を守るために金を買う」という動きに出ます。つまり、金の高騰は「市場がアメリカを信頼できない」というサインになる可能性があるのです。
投資家としては、この「裏のメッセージ」を感じ取ることが、ニュースを読む大事なポイントです。
まとめ:投資家にとっての金の意味
金は今、強烈に注目されている資産です。
ゴールドマンの予想通りに5000ドルに行くかどうかは別として、確かに「守りの資産」としての価値は高まっています。
しかし、私たちがやるべきことは「飛びつく」ことではなく、「冷静に組み入れる」こと。ニュースを鵜呑みにせず、裏にある経済・政治の動きを読み解く習慣が未来の投資力になります。
若いうちから投資を始めるなら、株や債券といった「攻めの資産」に加えて、「守りの金」をどう配分するかを考えることが、バランスの良い投資家になる第一歩です。
【出典】
・タイトル:金は5000ドル近くに上昇、FRBの独立性損なわれれば-ゴールドマン
・URL:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-04/T21OXWGOT0JN00
・媒体名:ブルームバーグ
・掲載日:2025年9月4日