米トリプル安の一服は本物か?投資家が抱える新たな緊張
株式・債券・通貨のトリプル安という異例の動揺を見せた米市場。トランプ政権による相互関税とFRB(米連邦準備理事会)議長解任騒動で揺れたマーケットは、ここに来てようやく一服感を見せています。しかし、表面上の落ち着きに惑わされてはいけないと、市場の内側からは警戒の声が漏れ始めています。
市場を動かしたトランプ政権の方針転換
今回、ドル安・株安・債券安の「トリプル安」を引き起こした直接の要因は、トランプ政権による不安定な政策運営でした。相互関税の導入とパウエルFRB議長の解任示唆。この二つの出来事が、グローバル市場に大きな不信感をもたらしたわけですが、その後のトランプ大統領による方針転換──関税の一部90日間凍結と議長解任撤回──が市場に小休止を与えたのです。
一時、円高への警戒感を示していた為替市場でも、ドル買いが戻ってきています。通貨オプション市場におけるリスクリバーサルは、4月初旬の混乱時に比べて大きく改善しました。確かに一見すると、マーケットの緊張は和らいでいるように見えます。
本当に安心していいのか?
しかし、マーケットの深層を見れば、まだまだ油断できる状況ではないことがわかります。米国債市場では、予想変動率を示すMOVE指数が依然として高水準にあり、株式市場でも恐怖指数(VIX)は落ち着きを取り戻していません。米景気後退懸念は根強く、特に景気敏感株であるエネルギーセクターの動きが鈍いことは不吉なサインです。
UBS証券の調査によれば、プロの投資家の多くが「米国株は景気後退を織り込んでいない」と見ており、まだ本格的な調整局面に入っていないとの認識が広がっています。
次に待ち受ける「雇用統計リスク」
5月2日に発表される米雇用統計は、今後の市場動向を占ううえで極めて重要です。FRB高官からも「雇用情勢が悪化すれば、利下げを早める」との発言が出ており、指標の内容によっては再び市場が荒れる可能性が出てきました。仮に雇用が大きく悪化すれば、FRBの利下げ観測が急浮上し、金利・為替・株価に大きなインパクトを与えるでしょう。
投資家はどう動くべきか
こうした状況を踏まえると、今は浮かれ気分でリスクを取りに行く局面ではなさそうです。市場は一時的な反発を見せても、根底にある不安定さは解消されていません。むしろ、次の下落局面に備えてキャッシュポジションを厚めにし、マーケットが適正水準に達するのを待つ。これが賢明な戦略かもしれません。
また、景気敏感株よりもディフェンシブセクターへのシフト、あるいはバフェット流の「長期的に成長する強靱な企業」への投資が、荒れるマーケットでも比較的安定したリターンを期待できる選択肢と言えそうです。
まとめ:一服はしても、緊張は続く
今回のトリプル安の一服は確かにポジティブなサインですが、それは一時的なものに過ぎないかもしれません。トランプ政権の政策ブレ、米景気後退リスク、雇用統計の動向──不確定要素は山積みです。投資家としては、冷静にリスクを見極めつつ、次の波に備える準備を怠らないことが求められています。
米トリプル安は終わったのか 解けぬ緊張、米国売り再燃も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2551U0V20C25A4000000
日経新聞 2025/4/28
