揺れる市場で生き残るために:記憶に縛られない投資戦略
金融市場を毎日のように揺らしている米国の関税政策。こんな不透明な時代に、私たち投資家が最も警戒すべきは「過去の記憶に縛られること」かもしれません。
記憶が生むバイアス:過去は未来の保証ではない
投資の世界では、過去の経験が「メモリーバンク」として私たちの判断に影響を与えます。若い世代はコロナショックやリーマンショックを知っていても、超インフレ期や長期の低成長期をリアルに体験しているわけではありません。一方、長年市場に関わってきた投資家は、1980年代の金利低下と株高の時代を引きずるかもしれません。
しかし、過去の延長線上に未来があるとは限りません。とくにトランプ大統領の貿易政策や市場変動が激しい今、従来の常識は通用しにくくなっています。
バリュー株とグロース株:再びバリューの時代?
過去15年、グロース株が市場を牽引してきました。アップル、エヌビディア、テスラ…。ですが、2025年に入り流れが変わりつつあります。バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの株価は年初来17.3%上昇。一方、ナスダック総合指数は10.9%下落しています。
リサーチ・アフィリエイツのロブ・アーノット氏は「混乱期にはバリュー株がグロース株をアウトパフォームしてきた」と指摘。今の市場環境こそ、グロース偏重のポートフォリオを見直すチャンスかもしれません。
米国一強の終焉?世界へ目を向ける時
ここ20年、米国株が圧倒的なリターンを上げてきたのは事実。でも2025年に入り、MSCIオール・カントリー・ワールド指数(除く米国)が、S&P500を14ポイント上回るパフォーマンスを記録しています。
外国株はPERが16倍未満、PBRも2倍以下。米国株の割高感(PER24倍超、PBR4倍超)を考えれば、ドル安が進む中で海外株への分散投資は無視できない選択肢です。
押し目買い神話に注意
「長期で見れば株が債券に勝つ」という通説も再考が必要です。サンタクララ大学のエドワード・マッコーリー教授によれば、歴史を遡ると株が債券に劣後する20年間も存在しました。つまり、長期投資も絶対ではないのです。
株価が高止まりしている現在、リターンが期待できない局面を想定し、期待値を控えめにしながらキャッシュ比率を高める、という冷静な選択肢も考えるべきです。
現金とゴールド:リスクヘッジの選択肢
かつて現金はインフレに弱いとされましたが、2025年現在、米国短期債やMMFは4%超の利回りを提供し、インフレ率も上回っています。現金もリターンを生む資産になりつつあります。
また、金(ゴールド)は危機時に頼れる資産ですが、歴史を振り返れば長期停滞も多い。過去最高値を付けた1980年から、インフレ調整後で今なお最高値を更新していません。金は万能ではないことも心に留めておきたいポイントです。
投資家へのアドバイス:記憶に縛られない
この混乱期、過去の「成功体験」がかえってリスクになります。私たちが持つメモリーバンクは、部分的な真実に過ぎない。だからこそ、
- グロース株だけでなくバリュー株も検討
- 米国市場に偏らず、世界に目を向ける
- 株と債券の伝統的なリターン神話を見直す
- 現金やゴールドのリスクとリターンを冷静に把握する
これらを意識しながら、時代の変化に柔軟に対応する投資姿勢が求められています。市場が不安定な今こそ、記憶の呪縛から自由になり、未来を冷静に見つめる力が必要です。
今の米株市場で犯しやすい間違いとは
ウオールストリートジャーナル 2025/4/30
