マネサバおじさん      

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マネー・サバイバル

—知識を武器に、未来を変える—

2025年8月22日

東京23区マンション価格1億円超、これって本当にバブル?

2025年8月21日の日経新聞の記事によれば、東京23区の中古マンション価格が3カ月連続で1億円を突破し、7月の平均は70㎡あたり1億477万円。前年比で38%も上昇しました。

「億ション」という言葉はバブル期の象徴のように使われましたが、今や都心では築30年を過ぎても「億ション」として売りに出されるケースが珍しくありません。港区では売り出し物件の54.5%が億ション、千代田区も51.2%。つまり、都心では“億ションが標準”になりつつあるのです。


マネサバくん: おじさん、23区の中古マンションが平均で1億円って…もう庶民は手が出ないですね。
私: そうだね。でも当時の1990年代バブルと違って、今回は円安と海外投資マネーが背景にある。だから「日本人が背伸びして買うバブル」ではなく、「海外から見れば安いから買われる」現象なんだ。
マネサバくん: ペンギン的に言えば、氷が溶けて魚が減ったところに、外からシャチがやってきて一気に魚を持っていっちゃう感じですか?
私: いい例えだね。地元の魚(資産)が外の力でどんどん高値になってるんだ。


円安と海外マネーの流入

今回の値上がりの最大の要因は「円の価値の下落」です。海外投資家にとって、日本の不動産は円安によって割安に映ります。ドル建てで見れば、1億円のマンションも過去よりはるかに手頃な値段に感じられるのです。

加えて新築マンションの供給減も需要を押し上げています。24年の23区の新築販売戸数は前年比30.5%減。供給不足が中古市場に波及し、「住むため」というより「資産運用のため」に購入されるケースが増えているのです。


富裕層が一気に増える計算?

面白いのは、この価格を単純に富裕層の定義に当てはめた場合です。
野村総研によると、日本の富裕層は「不動産を除く金融資産が1億円以上の世帯」とされています。ところが、23区の中古マンション平均価格が1億円を超えた今、「マンションを売っただけで一時的に富裕層になれる人」が急増するわけです。

23区のマンション世帯は約103万件。もし全世帯が一斉に売却すれば、富裕層が全国で165万世帯から1.5倍に増える計算になります。もちろんそんなことは現実的に起きませんが、この価格水準がいかに異常かを物語っています。


マネサバくん: おじさん、もしみんなが一斉にマンションを売ったらどうなるんですか?
私: 簡単に言えば、不動産価格は暴落するね。需要と供給のバランスが崩れるから。
マネサバくん: ペンギン的に言うと、みんなが一斉に魚を市場に出したら値段が暴落するのと同じですね。
私: そうそう。だから「売れば富裕層」というのは机上の空論。でも高値掴みリスクを考えると、やっぱり不安は残るね。


二極化する都市

記事によれば、東京23区や大阪市は価格が上昇する一方、横浜やさいたま、千葉などは下落傾向にあります。これは「投資マネーが集まる都市」と「実需層が中心の都市」との二極化を示しています。

投資マネーは世界中を駆け巡ります。円安や株高の資産効果を背景に、東京や大阪といった国際的ブランド力のある都市に集中し、郊外や地方都市は置き去りにされる。これは世界的なトレンドでもあります。

ニューヨークやロンドンでも、富裕層のマネーは都心の不動産に集中し、結果として地元住民が住めなくなる現象が進んでいます。東京もその仲間入りをしているということです。


投資家としての視点

ここで重要なのは「不動産が本当に値上がりしているのか?それとも円の価値が下がっているのか?」という問いです。

円安が進めば、ドル換算での不動産価格は横ばいでも、円建てでは上がったように見えます。つまり「資産価格の上昇」なのか「通貨価値の下落」なのかを切り分けることが大切です。

投資家としては、

といったリスクを理解しておく必要があります。


マネサバくん: おじさんはマンション投資に興味ないんですか?
私: そうだね。流動性が低いから、投資先としてはあまり魅力を感じない。株や債券なら売りたいときにすぐ売れるけど、不動産はそうはいかない。
マネサバくん: ペンギン的に言えば、魚はすぐ食べられるけど、氷の家は壊すのに時間がかかるってことですね。
私: その例え、分かりやすい(笑)。まさにその違いだよ。


まとめ

東京23区の中古マンションが平均で1億円を超えるというニュースは衝撃的です。表面的には「不動産バブル」に見えますが、背景には円安と海外マネーの流入という大きな要因があります。

ただ、投資家としては「値上がり=チャンス」と単純に捉えるべきではありません。むしろ「円の価値下落による見かけの値上がり」である可能性を冷静に見極める必要があります。

もしマンションを売れば富裕層になれる、そんな冗談のような状況が現実に語られる時点で、市場はやや危うい熱気を帯びているのかもしれません。

投資家にとって大切なのは、不動産価格の表面だけでなく、その裏にある通貨価値や国際マネーの動きを読み解くこと。これからの時代、資産を守るには「どこに住むか」ではなく「どの通貨で資産を持つか」という視点がより重要になるでしょう。


【出典】

・タイトル:東京23区の中古マンション、7月も最高値1億477万円 1年で38%上昇
・URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB20BIU0Q5A820C2000000/
・媒体名:日経新聞
・掲載日:2025年8月21日