マネサバおじさん      

マネサバおじさん

マネー・サバイバル

—知識を武器に、未来を変える—

2025年9月22日
マネサバくん悩む

プラザ合意から40年──金と「通貨Gゼロ」の世界に学ぶ投資の教訓

マネサバくん:おじさん、今日のテーマは「プラザ合意」って書いてあるけど、正直よく分からないんだよね。
:いい質問だね。
プラザ合意は1985年にアメリカ・日本・西ドイツ・フランス・イギリスの5カ国が集まって、ドル高を是正するために協調介入を決めた合意のことなんだ。
ここから日本は一気に円高になって、経済の流れが変わったんだよ。


プラザ合意が生まれた背景

1970年代のアメリカは激しいインフレに苦しんでいました。
背景には、ニクソン大統領がFRBに金融緩和を迫り、当時のバーンズ議長がそれを受け入れたことがあるとされます。その結果、物価は年率10%を超えるようなインフレに。

そこで登場したのが「伝説の男」ポール・ボルカーFRB議長です。彼は金利操作ではなく通貨供給量の調整による金融引き締めを実行しました。
短期金利は一時20%にまで跳ね上がりました。これによりインフレは収まりましたが、ドルは極端に高くなり、アメリカの製造業は大打撃を受けることになります。

この状況を修正するために開かれたのが1985年9月22日の「プラザ合意」でした。ここから円高時代が始まり、日本の輸出産業は構造転換を迫られ、やがてバブル経済へと進んでいったのです。


マネサバくん:なるほど!じゃあプラザ合意って「ドルを下げるための協定」だったんだね。
:そういうこと。歴史的には「通貨の力関係を大きく動かした日」として記憶されているよ。


そして今──ドル不信と「金」に群がる世界

本日の日経新聞は、プラザ合意から40年という節目に「基軸なき世界」という特集を1面に掲載しました。注目されたのは、各国中央銀行が金を大量に買い増しているという事実です。

かつては「金を売ってドルを買う」のが当たり前でした。ドルは戦後の世界で唯一の基軸通貨として信頼されていたからです。ところが今、ドルへの信頼は揺らいでいます。

こうした要因から「ドルだけに頼るのは危険だ」と考える国が増え、中央銀行の金保有は再び急増しています。実際に中銀が保有する金は3万7千トン台に達し、外貨準備の中でユーロを上回り、ドルに次ぐ規模になっているのです。


「通貨Gゼロ」という新しい不安

この動きの本質は「次の基軸通貨が見えない」ということです。

これについて米カリフォルニア大学のバリー・アイケングリーン教授は「ドルの代替がないからこそ、消去法で金に資金が集まっている」と指摘しています。つまり「ドルでもユーロでも人民元でもない」、頼れる通貨が存在しない──これが「通貨Gゼロ」と呼ばれる状況です。

さらに投資家のレイ・ダリオ氏も「これから数年で金融・経済・政治に大きな変動が起こる」と警告しています。
金価格が最高値を更新しているのも、この「不安の裏返し」なのかもしれません。


マネサバくん:おじさん、ちょっと怖い話だね…。もし「基軸通貨」がなくなったらどうなっちゃうの?
:一番怖いのは「世界がバラバラになる」ことだよ。国際協調が弱まれば、貿易も投資も不安定になって、混乱が長引く可能性があるんだ。


日本の歴史と重なる影

今回の記事を読みながら、私は日本の戦後インフレを思い出しました。敗戦後の日本では旧円が急激に価値を失い、最終的には新円切り替えが行われました。
紙幣の価値が消えるという現象を、多くの国民が経験したのです。

そして今の日本は、あの時より財政状況が悪化しています。政府債務残高はGDPの2倍を超え、世界でも突出しています。現時点で日本円が直ちに信用を失うわけではありませんが、「通貨Gゼロ」の流れは他人事ではありません。


プラザ合意から投資家が学ぶべき教訓

今回の記事から投資家が学ぶべきポイントは、「どんな通貨も永遠に安全ではない」ということです。

  1. 分散投資の重要性
     特定の通貨や資産に偏るのは危険。株式・債券・金・不動産など、バランスを取ることが大切。
  2. 歴史から学ぶ姿勢
     1970年代のアメリカや戦後日本のように、インフレや通貨危機は繰り返し起こる。歴史を知ることがリスク管理になる。
  3. 「金」は最後の保険
     金は配当も利息も生みませんが、「信用不安」に強い資産です。比率は人それぞれですが、資産の一部を金に分散しておく考え方は理解しておくべきでしょう。

マネサバくん:つまり、僕たち投資家にできることは「柔軟に備える」ってことだね。
:その通り。未来は読めないからこそ、分散して備えることが一番の安心につながるんだ。


まとめ:新秩序の足音を聞く

1985年のプラザ合意から40年。当時は「ドルを安定させる」ことが世界共通の目標でした。ところが今は、「ドル不信」「通貨Gゼロ」といった不安が大きくなっています。

今、世界の秩序は変わろうとしています。金が買われているのは、単なる投資ブームではなく、「次の基軸が見えない時代の不安の表れ」です。

こうした状況の中で私たち個人投資家にできるのは、歴史から学び、分散を意識し、「いつか来る変化」に備えること。

投資の勉強とは、こうした大きな流れを理解し、自分の資産管理に活かす力を身につけることだと思います。


【出典】

[タイトル]:プラザ合意40年、金に群がる中銀 忍び寄る「通貨Gゼロ」の世界
[URL]:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1101H0R10C25A8000000/
[媒体名]:日本経済新聞
[掲載日]:2025年9月22日