
中銀ラッシュの週を前に考える投資家の視点
世界の金融市場にとって、9月はまさに「中銀ラッシュ」。アメリカ、イギリス、日本と、主要な中央銀行が立て続けに政策を発表する週を迎えました。なかでも投資家が注目しているのは、米国の利下げです。
トランプ大統領がかねてから求めてきたこの利下げは、景気を支える一方で、インフレ懸念や政治的圧力とのせめぎ合いを象徴する出来事とも言えます。
米国:トランプ大統領の圧力と「労働市場減速」という大義名分
今回のFOMCでは0.25%の利下げが有力視されています。背景には「労働市場の弱さ」が挙げられています。失業保険申請件数が急増しており、景気の足元が揺らいでいるように見えるからです。
ただし、失業率は依然として5%を下回り、ほぼ完全雇用状態。正直なところ、「本当に利下げが必要なのか?」と疑問を持つ投資家も少なくないでしょう。
マネサバくん:おじさん、完全雇用って聞いたことあるけど、5%以下ならもう十分雇用されている状態なんだよね?
私:そうだよ。だから今回の利下げは「雇用が弱ってきたから」というより、大統領の意向に寄せた動きに見えてしまうんだ。投資家はそのあたりを冷静に見てるね。
政治的圧力に屈したように見えれば、FRBの独立性への疑念も生まれかねません。それでも市場は「利下げ=株価の支え」と理解しているため、株式相場にとってはポジティブに受け止められる可能性が高いy様です。
イギリス:CPI3.8%でも金利据え置きへ
次に注目すべきはイギリス。8月の金融政策委員会では意見が三つに割れ、即時利下げを主張する委員もいたほどです。とはいえ、消費者物価指数は3.8%と高止まり。ここで追加利下げに踏み切る余地はあまりありません。
マネサバくん:イギリスのCPI3.8%って結構高いよね?
私:そうだね。日本がずっとデフレだったのを考えると驚く数字。でも欧州は高インフレを経験してきたから、4%以下なら「耐えられる範囲」と見ることもできるんだ。
イギリスの政策金利は4%。この水準で当面据え置かれる見込みです。利下げを急げば通貨ポンドが大きく売られる可能性もあるため、金融政策の手綱さばきが非常に難しい局面です。
日本:CPI3%越えでも利上げは遠い
さて問題は日本です。全国CPIは3%を超えていますが、政策金利は0.5%に留まったまま。実質金利で見ると大幅なマイナスです。理屈だけで言えば「もっと利上げすべき」なのですが、日銀は慎重な姿勢を崩しません。
マネサバくん:CPI3%超で金利0.5%って…普通に考えたらおかしくない?
私:確かに、おかしいよね。でも日銀が利上げをすれば、日銀自身の国債の評価損や当座預金の逆ザヤが発生しかねません。だから「分かっていても動けない」というのが現実なんだと思うよ。
円安はさらに進む可能性があります。輸入コストが増えれば物価も押し上げられる悪循環ですが、日銀は「基調的なインフレ率がまだ目標に届いていない」という理由から利上げはまだまだ先に(というか、利上げは無し)なると私は考えています。
少しですが、利上げを予想する記事も有り、投資家にとっては為替の急変動に警戒が必要です。
政策の違いが投資家に与えるヒント
この「米国=利下げ」「イギリス=据え置き」「日本=据え置き」という並びをどう解釈すればよいのでしょうか。
- 米国:利下げで株高を狙うが、通貨ドルはやや軟調か
- イギリス:インフレ抑制を優先、利下げは慎重
- 日本:インフレを無視した超低金利維持、円安方向
ここから見えてくるのは「通貨の強弱関係」。ドルは一時的に弱くなる可能性がありますが、政治と経済の力強さから長期的には堅調。円は弱さが目立ち、ポンドはボラティリティの高いレンジで揺れるでしょう。
マネサバくん:じゃあ投資家はどこに注目すればいいの?
私:まずは米国株だね。利下げで資金が流れやすくなるから。逆に日本株は円安の追い風があっても、金利を上げられない構造的リスクを抱えている。短期的には動きやすいけど、長期投資ならやっぱり米国が安心感あるよ。
歴史の教訓:利下げは必ずしも「救いの一手」ではない
ここで思い出しておきたいのは2008年のリーマンショックです。当時もFRBは利下げを続けましたが、結局バブル崩壊を止めることはできませんでした。利下げは「時間を稼ぐ手段」にはなりますが、根本的な経済問題を解決するわけではないのです。
日本が一番良い例ではありますが。
一方で、投資家にとっては利下げは「リスク資産に資金を振り向けるシグナル」として機能しやすい。今回も株や金など、リスク資産への資金流入が強まる可能性が高いでしょう。
投資家としての行動指針
今回の中銀ラッシュで重要なのは、短期的な値動きに振り回されないことです。為替は急変動するかもしれませんが、長期的なトレンドを見れば米国株・米国ETFの強さは変わりません。
投資の基本を思い出しましょう。
- 時間を味方につける(バフェットの教え)
- 世界で一番強い国に投資する(藤巻健史氏の視点)
- 市場の非合理性を利用する(ソロスの考え方)
中銀の動きを短期的にトレードするのも面白いですが、長期の資産形成では「米国中心の分散投資」が王道であることを、今回のニュースが改めて教えてくれています。
まとめ:9月19日が一つの分岐点
今週の中銀ラッシュは、9月19日の日本のCPI発表と日銀会合でひと区切りを迎えます。市場はすでに米国の利下げを織り込んでいるため、サプライズは限定的かもしれません。それでも為替のボラティリティは高まるでしょう。
投資家にできることは、焦らず、大きなトレンドを見極めること。短期の波を泳ぎ切る技術も必要ですが、最終的に資産を守り増やすのは「長期の視点」です。
【出典】
・タイトル:【焦点】トランプ氏待望の米利下げに注目-英中銀と日銀は据え置きへ
・URL:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-14/T2JSEJGPQQ6S00?srnd=cojp-v2
・媒体名:ブルームバーグ
・掲載日:2025年9月14日