
サブプライム再び?
自動車ローン破綻から学ぶ投資のリスク管理
「サブプライムローン」という言葉を聞くと、投資家なら誰しも背筋が寒くなるのではないでしょうか。2008年のリーマンショックの引き金となったのが、まさに「サブプライム住宅ローン」でした。あの時の世界的混乱は、金融市場の歴史に深く刻まれています。
今回ブルームバーグが報じたのは、米トライカラー・ホールディングスというサブプライム自動車ローン会社の清算申請。負債総額は最大1.5兆円、債権者はJPモルガンやバークレイズなど大手銀行を含め2万5000以上。事件の規模は住宅ローン危機ほどではないにせよ、投資家として無視できないニュースです。
マネサバくん:おじさん、サブプライムって「信用力の低い人向けローン」のことだよね?住宅ローンだけじゃなかったの?
私:そう、もともとは住宅が有名だけど、自動車やカードローン、最近だとBNPL(後払いサービス)も広義にはサブプライムに近いんだよ。借り手は「社会保障番号や信用履歴がなくても借りられる」仕組みだった。まさにリスクの高い層に貸していたわけだ。
マネサバくん:じゃあ、2008年の再来になるの?
私:今回は規模が小さいから金融システム全体が崩れることはない。でも「構造が似ている」という点で要注意なんだ。
サブプライムの仕組みと今回の特徴
サブプライムローンは、もともと「信用力が低い層に高金利で貸し出す」モデル。リスクが高い分、貸し手は高い利回りを得られる可能性があります。問題は、このローンをまとめて「証券化」して投資家に販売することです。
投資家は「AAA格付け」などを信じて購入しますが、格付けは「全員が同時に破綻しないだろう」という前提に基づいています。しかし、現実には政策や景気の変化で一気に破綻が広がることもある。今回のトライカラーも、不法移民を中心に顧客を抱えていたため、トランプ政権の移民取り締まり強化でビジネスモデルそのものが崩れてしまいました。
マネサバくん:それって格付けがあっても安心できないってこと?
私:そうなんだ。AAAとかAA-って聞くと安全に見えるけど、中身が本当に健全かは別問題。金融商品は「包装紙」より「中身」を見ることが大切だよ。
リスクの連鎖はBNPLにも?
今回の件で気になるのは「BNPL(Buy Now, Pay Later)」です。カードを作れない若者や信用履歴の薄い層を対象にしている点で、サブプライムに近い特徴があります。実際、今週スウェーデンのクラーナがNY証券取引所に上場し高値を付けましたが、この分野は「新しい顔をしたサブプライム」と見ることもできるでしょう。(あくまでも私個人の味方です)
もしBNPL企業が信用リスクを過小評価したまま拡大すれば、規模の大きさから金融市場に影響が出る可能性はあります。自動車ローンの1.5兆円規模よりも、はるかに大きな数字になるからです。
マネサバくん:うーん、怖いね。でも、投資家としてはどう気を付ければいいの?
私:一番大切なのは「流行に飛びつかないこと」だよ。BNPLやフィンテックは魅力的に見えるけど、ビジネスモデルの脆弱さを理解しておく必要がある。投資するなら全資産のごく一部で十分だね。
投資家が学ぶべき教訓
- 格付けは絶対ではない
AAAのラベルに安心せず、中身を見極める視点が必要。 - ビジネスモデルの持続可能性
政策や規制に依存するモデルは危険。トライカラーは移民政策に直撃を受けた。 - 金融イノベーションとリスクはセット
BNPLや新しい貸付モデルは便利だが、必ず裏にリスクがある。 - 分散投資の重要性
一つのテーマや商品に集中すれば、破綻時に大打撃。守りを固めてこそ投資は続けられる。
2008年との比較
2008年のサブプライム危機では、住宅ローンという巨大市場が証券化を通じて世界中に広がり、リーマンショックを引き起こしました。今回の自動車ローン破綻は規模が1.5兆円程度で、システムリスクには直結しません。
しかし、「小さな火事が大きな山火事につながる」ことを忘れてはいけません。BNPLのように急拡大する分野で同じ構造的問題があれば、再び世界を揺るがす可能性があります。
マネサバくん:つまり、歴史は繰り返すかもしれないってこと?
私:そう。だから投資家は「過去から学ぶ」ことが最大のリスク管理なんだよ。
投資教育としてのまとめ
今回のニュースは、一見アメリカの自動車ローン破綻という限定的な話に見えるかもしれません。ですが、投資教育的に考えると多くの学びがあります。
- 表面的な格付けや流行に惑わされないこと
- 政策リスクを常に考慮すること
- イノベーションとリスクを冷静に捉えること
そして何より、2008年の教訓を繰り返さないために、投資家一人ひとりが冷静にリスクを分散することが大切です。
今回の破綻が世界規模の混乱を引き起こすことはないでしょう。しかし、「次のサブプライム」はどこから現れるか分かりません。その可能性を常に頭の片隅に置いておくことが、長期的に資産を守るための最良の防御策になるのです。
【出典】
・タイトル:サブプライム自動車ローン会社が清算申請、貸し手にJPモルガンなど
・URL:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-10/T2DWV5GP9VDF00
・媒体名:ブルームバーグ
・掲載日:2025年9月11日
過去から学ぶと言えばレイ・ダリオ氏。
こちらの本も紹介しておきます。