
インフレ改善の代償
「インフレを止めるために、国の予算を思い切り削る」
言葉にすると簡単ですが、実際にやると国中が揺れます。
今回の日経新聞の記事は、アルゼンチンで行われた“劇薬”とも言える緊縮財政と、その結果としてのインフレ改善を伝えています。
200%を超えていたインフレ率が、わずか2年で30%台まで低下。数字だけを見ると「大成功」に見えますが、そこには相当な痛みも伴っていました。
今日はそのあたりを、いつものようにマネサバくんと一緒に、ゆっくり考えてみます。
■ インフレ改善って、そんなに良いこと?
マネサバくん:おじさん、ニュースで見たんだけどさ。アルゼンチンってインフレが200%から30%になったんでしょ?
私:そうだね。数字だけ見ると、びっくりするくらいの改善だ。
マネサバくん:30%でも高いけど、それでも「インフレ改善!」って言っていいの?
私:うん、以前が異常すぎたからね。毎年お金の価値が半分以下になる世界だったから。
インフレというのは、簡単に言うと「お金の信用が壊れていく状態」です。
今日100円で買えたものが、来月は150円、再来月は300円。
これが続くと、人はお金を持たなくなり、経済は混乱します。
アルゼンチンはまさにその状態でした。
■ チェンソー大統領の正体
今回の主役は、アルゼンチンのミレイ大統領。
彼は国家予算をバッサバッサと削る姿勢から「チェンソー」と呼ばれています。
マネサバくん:チェンソーって…完全に悪役じゃん。
私:見た目は怖いけど、やってることは一貫してるんだ。
・政府予算を約3割削減
・公務員を6万人削減
・補助金カット
・既得権益にメス
その結果、基礎的財政収支(いわゆる家計で言う黒字)が一気に黒字化しました。
これは教科書通りの緊縮財政です。
■ なぜインフレが止まったのか
マネサバくん:でもさ、お金刷らなきゃ景気良くならなくない?
私:そこが一番の誤解なんだ。
国が借金してお金をばらまけば、短期的には楽になります。
でも、それを続けるとお金の信用が落ちて、インフレになります。
これは、フリードリヒ・ハイエクがずっと前に指摘していた考え方です。
ミレイ大統領も、もともと大学教授で、ハイエクを支持する立場なんですね。
「通貨を守らなければ、経済は壊れる」
アルゼンチンは、その実験場のような国でした。
■ でも、痛みは確実に出た
インフレは改善しました。
しかし、代償もはっきりしています。
・約2万社が倒産
・約28万人が失業
・失業率は6.6%に上昇
・貧困層が拡大
マネサバくん:うわ…数字だけ見ると、かなりキツいね。
私:そう。インフレを止めるってことは、経済の熱を一気に冷ますことなんだ。
インフレが落ち着く=景気が落ち込む
これは、ほぼセットで起きます。
■ それでもGDPは成長した
ここが一番ややこしいポイントです。
痛みが出ているのに、GDPは成長している。
マネサバくん:え?不景気なのに成長?
私:短期の混乱を越えると、「安定」が評価されるんだ。
お金の価値が安定すると、
・投資が戻る
・海外マネーが入る
・企業が計画を立てやすくなる
結果として、経済が回り始めます。
インフレ改善がもたらす“後半戦”ですね。
■ 日本は他人事じゃない
さて、ここからが本題です。
日本の今年度の財政赤字は、対GDP比で約4.8%。
かつてのアルゼンチンと、数字だけ見れば大差ありません。
マネサバくん:でも日本は先進国だし、全然違うでしょ?
私:みんなそう思ってた国が、アルゼンチンなんだよ。
1920年代、アルゼンチンは世界5位の経済大国でした。
当時の日本は10位前後。
それが今はどうでしょう。
日本も今年度中に、インドに抜かれて世界5位に転落しそうです。
■ インフレ改善は「楽な道」じゃない
マネサバくん:じゃあ日本もチェンソー持つしかないの?
私:そこまで行く前に、ゆっくり直すのが理想だね。
アルゼンチンは、追い詰められてから一気にやりました。
だから痛みも大きかった。
インフレ改善は、魔法じゃありません。
必ず「誰かが痛みを引き受ける」政策です。
■ まとめ:インフレ改善は経済の体力測定
アルゼンチンの事例は、こう教えてくれます。
・インフレは放置すると国を壊す
・インフレ改善には痛みが伴う
・でも、通貨の信用が戻れば成長は可能
マネサバくん:インフレって、怖いけど目に見えにくいね。
私:だからこそ、気づいた時には手遅れになりやすい。
数字が語る現実を、感情抜きで見る。
それが、これからの時代に一番大事な投資リテラシーかもしれません。
【出典】
タイトル:アルゼンチン、緊縮財政で経済成長 「劇薬」2年でインフレ大幅改善
URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1501L0V11C25A2000000/
媒体名:日経新聞
掲載日:2025年12月27日
