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マネー・サバイバル

—知識を武器に、未来を変える—

2025年5月30日

「利上げできない」ではなく「利上げしない」?日銀総裁の言葉ににじむ苦しい本音


5月30日、日銀の植田和男総裁が国会での答弁に立ち、金融政策や国債市場の現状について語りました。表面上はいつも通り「市場の点検」「不確実性」「丁寧な対応」といったお馴染みのキーワードが並びましたが、その裏にはどうにも歯切れの悪い印象が残ります。

なぜこんなにも、日銀は本格的な利上げに踏み切れないのか?
その背景にあるのは、やはり日銀自身の財務状況の悪化ではないかと、多くの投資家が感じているのではないでしょうか。


「超長期債も点検中」…でも、減額には慎重な姿勢

今回の記事で総裁が言及したのは、償還まで25年以上の超長期国債の利回り上昇について。「市場の声を聞きながら点検中」とのことですが、実際にはこの年限の国債の買入れはまだ減額されていません。

すでに25年以下の国債の買入れには着手していますが、「本当に金利を上げる気があるなら、なぜこの部分は手をつけないのか?」という疑問が残ります。

そもそも超長期国債の利回りが上がれば、政府の将来の利払い負担も増えますし、日銀自身の保有国債の評価損もさらに大きくなってしまいます。つまり、「触れたくない部分」だから、後回しにしているとも見えます。


食料品の値上がりには慎重な表現

足元で続く食品価格の上昇について、総裁は「秋以降に下がるかは不確実性がある」と語りましたが、同時に「上昇率は鈍化している」として、あくまで「インフレは一時的」といった立場を崩していません。

でも、現実のスーパーで感じるのは「一度上がった値段は下がらない」という生活者の実感。インフレが“静かに定着してしまっている”中で、「まだ2%の物価目標には達していない」と言い続けるのは、正直苦しい説明です。


ETFの売却は“検討中”…何年も

日銀が大量に保有しているETF(上場投資信託)の売却についても、「時間をかけて検討中」という回答に終始しています。これは前から言われ続けている内容で、目新しさはありません。

しかし今回、注目すべきはその裏側。日銀の利払い費はすでに6.6倍の1兆2517億円にまで膨らんでおり、もはや経営を圧迫する水準です。総裁は「ETFの分配金収入が収益のマイナスを打ち消している」としていますが、逆に言えばETFの“含み益頼み”になっているということ。

これは中央銀行というより、どこかの高配当銘柄に依存する個人投資家のような構図。こんな状況でETFを売ってしまえば、含み益の支えがなくなり、日銀の収益は一気に悪化する可能性があります。


「財務状況は関係ない」と言い切る、その自信の根拠は?

植田総裁は「日銀の財務悪化がETF売却の判断を遅らせる理由にはならない」と明言しています。

でも、そう言い切るには根拠がやや乏しいようにも感じます。先日の決算では国債の含み損が28兆円を超えており、これまでの「金融緩和の副作用」がいよいよ表面化してきています。

その中で「問題ない」と繰り返す姿は、どこか問題を認めたくない気持ちの現れにも見えてしまいます。


投資家として、何を読み取るべきか?

今回の総裁発言で浮かび上がったのは、「本格的な利上げに踏み切れない日銀の事情」と「その説明を丁寧に繕おうとする姿勢」です。

金利を上げれば債務が膨らむ。ETFを売れば収益が落ちる。国債を手放せば市場が混乱する——。
そうした“動けない理由”があまりにも多すぎて、どれも“検討中”でとどまってしまっているのが現状です。

私たち投資家にできるのは、こうした中央銀行の立場を冷静に見つめたうえで、インフレや通貨の信頼低下に備えた資産の構築を考えることかもしれません。


日銀総裁、国債市場の動向「超長期債含めてしっかり点検」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB300PW0Q5A530C2000000/
日経新聞 2025/5/30