マネサバおじさん      

マネサバおじさん

マネー・サバイバル

—知識を武器に、未来を変える—

2025年10月6日
マネサバくん悩む

高市トレードが映す「日本の未来」

株も為替も“お祭り相場”

本日のマーケットはまさに“お祭り”でした。
株価はオープニングから2000円近い上昇、ドル円も一気に2円の円安。債券は少し売られ、金利がじわりと上昇。

「高市トレード」という言葉が一気にSNSを駆け巡っています。
まるで「アベノミクスの再来」を期待するかのような動きです。


高市トレードって何?

マネサバくん:おじさん、“高市トレード”ってどういう意味? トレードってことは短期勝負なの?

:そうだね。政策期待で株が上がって、円が売られる。いわば“雰囲気トレード”だね。政治が変わると、一時的にお金の流れも変わるんだよ。

マネサバくん:なるほど! でも、みんなが買ってる時に買えば儲かるんじゃ…?

:それがね、マーケットは“期待”のうちは上がるけど、“現実”が見え始めると逆回転することが多いんだ。


拡張財政という“甘い薬”

高市氏は旧安倍派。つまり、拡張財政の流れを引き継ぐ可能性が高い。
「減税」「補助金」「公共投資」――これらは一見すると“国民思い”の政策に聞こえます。

でも、経済学的に見ると、インフレ対策には金融引き締めしか効果がないんです。
なぜならインフレは、通貨の価値が下がる現象。
通貨が多すぎると、通貨の価値が下がり、相対的にモノの値段が上がります。


インフレにお金を配るのは逆効果?

マネサバくん:えっ、インフレの時にお金を配るのはダメなの?

:うん、火事の時にガソリンをかけるようなものだよ。通貨の価値が落ちてるのに、さらにお金を増やしたらどうなる?

マネサバくん:ますます燃えちゃう…ってことか!

:その通り。1970年代のアメリカもそうだった。物価上昇が止まらず、最後はボルカーFRB議長が金利のコントロールを一度止めて、市中のドルを回収する政策を取ったんだ。これにより金利が20%まで上がったんだよ。


ボルカーの教訓:痛みの先に安定あり

ボルカー議長が登場するまで、アメリカも「減税や補助金で景気を支えよう」としていました。
でも結局、それはインフレを悪化させただけ

ボルカーは「もう景気よりも通貨の信頼を守る」と宣言し、金利が上がるのを無視してドルの回収を行いました。
その結果、短期的には大不況。だけど、長期的にはアメリカ経済の信頼を取り戻しました。


日本は“ボルカー前夜”かもしれない

日本はすでにGDPの2倍以上の財政赤字を抱えています。
それなのに、まだ「補助金」や「減税」を検討している。
つまり、政府が「民間が必要としていない円」を借金でばらまいている状態です。

この状況で本当に景気が良くなるでしょうか?
むしろ、通貨の信頼が揺らぎ、日本版トラスショックが起きても不思議ではありません。


トラスショックとは何だったのか?

マネサバくん:おじさん、トラスショックって前にも聞いたけど、どんなことだったの?

:2022年にイギリスのトラス首相が“減税&補助金”を一気に出して、財政が信用されなくなったんだ。ポンドは急落、国債は暴落。わずか45日で辞任した。

マネサバくん:えぇ…そんなに早く!?

:市場は正直だからね。政府の借金が膨らめば、通貨も国債も売られる。日本も他人事じゃないんだよ。


高市トレードの“賞味期限”

今回の上昇相場は「期待の先回り」。
でも、減税が実現しても、円安・株高が続くとは限りません。
投資家は「財政リスク」を冷静に見ています。

過去にも、似たような“期待先行トレード”が何度もありました。
民主党政権交代の時、アベノミクス初期、そして2020年の菅政権誕生時。
どれも1~2週間で反転しています。

つまり、「高市トレード」は短期筋の一撃勝負
長期投資家はここで浮かれてはいけません。


投資家が見るべき本質

政治イベントはマーケットの“きっかけ”にはなりますが、“方向性”を決めるのは経済の実態です。
特に重要なのは、

この3つ。

投資家として注目すべきは、**「金利」と「為替」**です。
円金利が上がる気配が見えたら、株高も円安も止まる可能性が高い。


マネサバくん:つまり、“高市トレード”は短期の波にすぎなくて、長期的には財政と通貨の信頼がすべてってことだね。

:その通り。投資で大事なのは“期待”に飛びつくことじゃなく、“構造”を読むことだよ。

マネサバくん:うーん、ボルカーさんみたいな覚悟が今の日本にあるのかなぁ…

:それを見極めるのが、投資家の目ってやつだね。


おわりに:市場は“期待”よりも“現実”を見る

株式市場の動きはいつも「期待→失望→現実」の繰り返しです。
でも、その中にチャンスも隠れています。

もし日本がこの先、本気で財政の建て直しに動けば、
円の信頼が戻り、海外投資家は再び日本株を買い始めるでしょう。

逆に、“バラマキ”が続けば、通貨価値の下落が止まらず、
最終的には国債市場の信頼危機――つまり、日本版トラスショックが現実になる。

いずれにせよ、今の日本は歴史の転換点に立っています。
だからこそ、投資家は冷静に、「何が本質か」を見抜く目を養わなければなりません。

“高市トレード”の先にある未来を読む。
それこそが、本当の意味での投資教育なのかもしれません。