
金の上昇が語る「通貨の信頼」
止まらない金の上昇
昨日のアメリカ市場では、金価格がついに4,000ドル目前まで上昇しました。
先月、ゴールドマンサックスが「金は5,000ドル近くまで上昇する可能性がある」と発言したばかりですが、まさかこんなスピードで実現に近づくとは思いませんでした。
しかも驚くべきは、ドル高の中で金が上昇しているという点です。
通常、ドルが強くなると金は下がる傾向があります。
それなのに、今回の金は押し目もほとんど作らずに上昇を続けている。
この現象こそ、世界の投資家が「通貨」よりも「金」を信頼し始めているサインなのかもしれません。
マネサバくん:おじさん、金ってそんなに強いの? ドルが上がってるのに一緒に上がるなんて不思議だね。
私:そうだね。普通なら金とドルは反対方向に動く。でも、今は通貨への信頼が揺らいでいるんだ。ドルも円も、“紙切れの信用”としての価値が少しずつ薄れてきてる。
マネサバくん:通貨への信頼が薄れるってどういうこと? お金はお金じゃないの?
私:うん。でも、お金の価値って「政府や中央銀行を信じる気持ち」で成り立ってるんだよ。信じる力が弱まると、人は“信用できる形のあるもの”に逃げる。それが金なんだ。
「最後の通貨」=金
金は昔から「最後の通貨」と呼ばれてきました。
紙幣がまだ存在しない時代から、人々は金を価値の基準として扱ってきました。
戦争や金融危機、ハイパーインフレの時代にも、
**「金を持つ者は最後に笑う」**という言葉が生き残っています。
今、世界のどこを見ても財政赤字が膨らんでいます。
アメリカも日本も、政府が「通貨の価値を守る」よりも「景気を支える」ことを優先している。
つまり、インフレを抑えるための痛みを避けているのです。
日本の現実:インフレは“2.7%”ではない?
日本のCPI(消費者物価指数)は公式には2.7%上昇と発表されています。
しかし、実感としてはどうでしょう?
お米は倍近くになり、10月に値上がりした食品の多くが10%以上上昇。
家賃も日経新聞によると0.5%上昇。都内の新築マンションは平均で1億越え。
これらを見て、「2.7%で済んでいる」と思える人は少ないはずです。
しかも、エネルギーや生鮮食品を除いた「コアCPI」は3.3%上昇。
これは、政府がガソリン補助金で一時的に押さえ込んでいるだけなのでは?
補助金の原資は借金、つまり財政赤字です。
マネサバくん:ってことは、補助金で物価を抑えても、結局は借金でツケを回してるってこと?
私:その通り。借金でお金をばらまくと、通貨の供給量が増える。結果的に円の価値が下がる。
マネサバくん:うーん、つまり“安く買える今のうちに金を持つ人が得する”ってこと?
私:まあ、そう単純ではないけど、方向性は近いね。金はインフレの“保険”みたいなもの。通貨の信頼が揺らぐとき、金はその信頼の代わりになるんだ。
通貨の信頼と金価格の関係
通貨の価値を測る指標として「金価格」はとても有効です。
ドルや円が下がるとき、金はその代わりに上がる。
今、世界中で金が上昇しているのは、どの国も似たような財政政策を取っているからです。
日本ほど極端ではないにせよ、どこの国も「国債の増発」と「金融緩和」を続けています。
レイ・ダリオ氏が著書『巨大債務危機を理解する』の中で警鐘を鳴らしていますが、
**「通貨の信頼を失うと、金が再び通貨の役割を取り戻す」**という時代が近づいているのかもしれません。
金鉱株AEMの投資状況
私は先日、カナダの金鉱株「Agnico Eagle Mines(AEM)」を171ドルで購入しました。
その後、170.41ドルまで下がっていますが、為替が147円から150円に動いたため、円換算では25,131円 → 25,561円とむしろプラスです。
長期投資なので、短期の値動きには一喜一憂していません。
むしろ、こうした通貨安による含み益こそ、金や金鉱株の本質的な強さを示しています。
マネサバくん:おじさん、金鉱株って金そのものを買うよりいいの?
私:どちらにもメリットがあるよ。金そのものは“価値の保存”、金鉱株は“収益の成長”。金価格が上がれば、鉱山会社の利益も増える。
マネサバくん:なるほど、だからAEMみたいな会社を持つのか!
私:そう。しかもAEMは財務も健全で、世界各地に鉱山を持つ。金が上がる時期には特に強い会社だよ。
投資家が学ぶべき「金の教訓」
金の上昇は、単なる投資チャンスではなく、「通貨とは何か」を考えるきっかけにもなります。
歴史を見れば、どの国の通貨も永遠ではありません。
- 1970年代:ドルが金との交換を停止(ニクソン・ショック)
- 1980年代:アメリカの金利暴騰期
- 2008年:リーマンショック後の量的緩和
- 2020年代:世界同時の財政赤字時代
すべてに共通するのは、危機のたびに金が買われたということ。
今の金上昇も、その延長線上にあると私は考えています。
おわりに:通貨の「信頼」を見極める力を
金が上がる理由は単純です。
「紙幣の信用が落ちる」から。
それは恐怖のサインでもありますが、同時に投資家にとっては“学びのチャンス”でもあります。
マネサバくん:おじさん、やっぱり“最後の通貨”って言葉、重いね。
私:そうだね。でも大事なのは“恐れること”じゃなくて、“理解すること”。金の動きは、経済の健康診断みたいなものなんだ。
通貨の信頼が強ければ金は下がる。
信頼が弱まれば金は上がる。
つまり、金の価格は“世界の不安の温度計”。
そしてその温度を読めるようになることこそ、投資家として成長する第一歩です。

