アメリカ国債よりアップル社債が安全?変わる投資の常識
投資の世界には「国債=安全資産」という鉄板の考え方があります。でも、最近それがちょっと揺らいできているようです。
アメリカでは、アップルやマイクロソフトといった大手企業の社債の上乗せ金利(国債に比べてどれだけ高い金利を上乗せするか)が、ついにマイナス圏に突入しました。これは「米国債より企業のほうがリスクが低い」と市場が見ている、かなり異例な状況を意味します。
アップルの2027年9月償還予定の社債にいたっては、上乗せ金利がマイナス0.043%。2006年以来、こんなことは起きていなかったそうです。
なぜこんなことに?
背景にあるのは、アメリカ政府と企業の「財政状態」の差。政府の財政赤字は拡大を続ける一方、企業は財務の健全性を高めてきました。たとえば、アップルのフリーキャッシュフロー(実質的な手元資金の増加額)は1080億ドルもの黒字。半年で借金を返せるほどの稼ぐ力があるわけです。
一方で、アメリカ政府のGDP比の債務残高は106%。それに対して金融を除くアメリカ企業全体では47%と半分以下。数字だけ見れば、企業の方がずっと財務的に健全なことがわかります。
これに加えて、トランプ政権が進める関税政策の影響も。関税強化はインフレリスクを高め、国債の金利上昇(価格下落)圧力につながります。結果、リスク回避のために国債に逃げるのではなく、「むしろ信用力の高い企業の社債を持とう」という動きが広がっているわけです。
社債にマネーが集まる時代
データを見てもその流れははっきりしています。トランプ氏が再び大統領に就任した昨年11月以降、米社債ファンドには119億ドルが流入。一方、米国債ファンドは21億ドルにとどまっています。
今や、「究極の安全資産」とされてきた米国債に対しても疑問符がつき始めている時代。アメリカの有力運用会社は、「これからは高格付けの社債にも目を向けるべきだ」とのリポートを出しており、これまでの常識が少しずつ変わってきているのを感じます。
これって日本には関係ないの?
日本も無関係とは言えません。長い間続いた超低金利政策からの転換が進む中、日本の国債も再び金利水準を意識した市場になりつつあります。企業が発行する社債も、国債と同じく金利の影響を受けるようになってきました。
経済や金融の常識は、実は結構流動的。かつて「安全」とされた資産が、未来永劫安全とは限らないということを、今回のニュースは教えてくれています。
少し視点を広げてみると
資産運用というと、どうしても「どの株を買うか」とか「今は円高か円安か」といった短期的な話に目が行きがち。でも、こうした大きな市場の動きを知っておくと、長期的な視点で自分の資産を守る考え方が身につくかもしれません。
もちろん、すぐに何かを始める必要はありません。でも、ニュースをきっかけに「世界ではどんなリスクが動いているのか」をちょっと意識してみると、これからのお金との向き合い方に少しヒントが見つかるかもしれません。
Apple社債に群がる投資家 国債代替、上乗せ金利マイナス
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB225WY0S5A120C2000000
日経新聞 2025年2月14日
