アップル株の低迷に見る「AI時代の期待と現実」
ここ数年、米国株をけん引してきた「マグニフィセント7」。そのなかでも、かつての絶対的エースと言えばやはりアップル。でも、ここにきてそのアップルの足取りが鈍くなっているというニュースが飛び込んできました。
2025年6月9日に開催されたアップルの年次開発者会議(WWDC)で、投資家たちの期待を超えるようなAI関連のサプライズはなく、株価は一時1.9%も下落。2025年に入ってからの株価も19%安と、あのテスラに次ぐ下落率です。
AI戦争に出遅れるアップル?
今回のWWDCで発表された内容を見ると、通話翻訳やChatGPT連携による画像生成など、確かにそれなりに「AI」感はある。ただし、これはマイクロソフトやグーグル、さらにはエヌビディアが先に進めてきた領域にようやく足を踏み入れた印象に過ぎません。
投資家が欲しがっていたのは、おそらく「アップルがAIをこう使って世界を変える」という大胆なビジョン。でも、今回の発表は“控えめ”に映ってしまったようです。
株式市場というのは、時に「内容」よりも「期待」が先行するもの。今回はその期待に応えられなかった、というのが正直なところでしょう。
PER26倍に映る“高すぎる期待”
現在のアップル株のPERは26倍。S&P500の平均が21倍程度ですから、まだまだ「期待」は株価に織り込まれています。言い換えれば、いまの株価には“未来の革新”が織り込まれているということ。
でも、その未来像がぼんやりしたままだとどうなるか?——当然、割高に見られて、売られるわけです。
あるアナリストは「株価が170〜180ドルまで下がらなければ、買いのタイミングは来ない」とコメントしています。たしかに、ここまで大きく成長してきた企業が次に何をするのか、明確な方向性が見えないままでは手が出しにくいのも納得。
ジョブスの残した“魔法”を、もう一度?
アップルはこれまで、iPod、iPhone、iPadといった革新的な製品で市場を驚かせてきました。その原動力が、やはりスティーブ・ジョブスという“天才”だったことは否定できません。
現在のアップルにも優れた技術とデザイン力はある。でも、それを「物語」に変える力が、少し弱まっているのかもしれません。
AI時代に求められるのは、技術そのものよりも「体験の変革」。そして、そこにアップルならではのストーリーが乗ってきたとき、再び市場は熱狂するはず。
個人投資家としての視点で考えると…
実は、こういう“期待外れ”の場面って、長期的にはチャンスになり得ます。なぜなら、株価が一時的に下がっても、企業そのものが成長を続ける限りは、いずれ見直されるから。
もちろん、それには前提として「将来性があること」「財務が健全であること」「ブランド力が高いこと」が必要ですが——そのすべてを満たしているのが、アップル。
長期投資の観点で見れば、「あのとき買っておけばよかった」ということも起こり得る銘柄。とはいえ、短期的にはしばらく苦しい時期が続く可能性もあるので、エントリーポイントは慎重に。
AI活用の遅れがもたらす株価の揺れを、どう見るか?
株というのは、期待と現実のバランスで動くもの。アップル株が今まさにその“揺れ”の中にあるのだとすれば、投資家としては焦らず、冷静に「何が本質なのか?」を見極めたいところです。
NY株ハイライト Apple、開発者会議も一時1.9%安 AI活用遅れ「投資家しびれ」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL100870Q5A610C2000000/
日経新聞 2025/6/10
